研究内容 Research
伊川正人特任教授の大阪大学での
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1 : 精子形成の制御の解明
ヒトでは心臓が一度拍動する期間に1,500もの精子が作られています。この精子形成は、未分化な精原幹細胞から始まり運動性を持つ半数体の精子に至るまで複雑なプロセスが厳密に制御されることによって維持されています。我々は精子形成過程においてヒストンのエピジェネティクスが大きく変動することに着目しヒストン修飾と精子形成の関わりについて研究を進めており、これまでに精巣において高発現するヒストン脱メチル化酵素Fbxl10/Kdm2bが、細胞周期の抑制因子であるP19およびP21を介して、精原細胞の分裂活性を調整し、早期加齢を抑制していることを見出しています(右図, BOR 2016)。更に、精原幹細胞の分化と自己複製のバランス制御をヒストンのエピジェネティクスが制御していることを見出しており、その詳細について解明すべく研究を進めています。
野生型のマウスの精巣(左)では持続的な精子形成が起こっているのに対し、Fbxl10/Kdm2b欠損マウスの精巣(右)では加齢に伴い精細胞を含まない精細管が増加する。
2 : 精子形成を支持するセルトリ細胞の役割の探索
精巣には精子形成を支持するセルトリ細胞というユニークな細胞が存在しています。セルトリ細胞は精原幹細胞のニッチとして自己複製に必要な因子を供給している一方で、精細胞の分化に必要なシグナルもまたセルトリ細胞から供給されます。さらに、分化過程の精細胞をアンカーする足場としての役割も果たしているなど、セルトリ細胞は精子形成において極めて重要な働きをしています。このセルトリ細胞の発生制御機構や精子形成を支持する分子メカニズムについて、エピジェネティクスおよび選択的スプライシングの制御という視点からその詳細を明らかにしていきたいと考えています。
精巣の組織切片像。赤は未分化精原細胞、緑はSertoli細胞